「一人の男とその人生を変える運命の女性との出会い」を描き続けるパトリス・ルコント監督。今回の新作も、移動遊園地を
舞台にミステリアスな女性と彼女に一目で惹かれる男性の間に生まれる愛の物語だ。しかし、今回、シャルロットが演じた
ローラは虚言症。男性の気を惹くために自分自身を嘘で塗り固めていく女性だ。が、彼女自身が抱いたローラ像は「大人に
なりきれない不器用な女性」。
「ローラは全然、ファム・ファタール(運命の女性)タイプとは思えないわ。だって彼女は自分自身を偽りで取り繕っているだけな
ん だもの。いつも他人にどう見られているかを考えているだけ。それもとっても不器用なやりかたでね。ローラ自身が持つファム
・ファタール像もとっても平凡。そのイメージって無声映画のヒロインやハード・ボイルド小説の女主人公ってところじゃない?
でも彼女の持つ不器用さにとても惹かれたの。個人的にも、ちょっと不器用さを持った人に魅力を感じてしまうのよね」
いつも出演を承諾した後に役と自分の共通点に気づくという彼女。それを変えつつ役作りをするそうだが、今回の共通点はなん
と ”危険”。
「嘘をつくっていうのはとても勇気のいること。それには危険も伴うわけじゃない。実は私もちょっぴり危険なことが大好きで、
例えば今回の作品でオートバイの曲芸にチャレンジできたのがとても楽しかったわ。それにちょっとずれていたり狂った人物
像についつい惹かれちゃうのよ」
これが初仕事となるルコント監督とは、「オファーを受けてから撮影までの時間があまりなくてじっくり話す時間がなかったけ
ど、ローラ像に対しても同じイメージだったからスムーズに役作りできたわ」と言う。
「撮影時には全然思わなかったんだけど、初めて完成した作品を観た時にカメラと登場人物の距離感がとても狭いことにびっ
くりしたの。本当に肌の細部まで見えるぐらい!(笑)。それがこの作品にある種の親密感を与えていると思う。自分でカメラを
のぞいて構図を決めるパトリスは、この作品の第3の共演者とも言えるかもね」
共演のフィリップ・トレトンはフランス演劇界最高峰<コメディ・フランセーズ>を代表する俳優で、最近は映画界の活躍も目覚しい。
「彼との共演はとても快適だったわ。撮影期間が短すぎて個人的な話をする時間はなかったけどお互いの間に暗黙の了解のよ
うなものがあって、すごくシンプルに仕事ができたの」
さて、フランスの若手女優の中でもおしゃれセンス抜群のシャルロット。インタビューにもリーバイスのジーンズに、即に彼女の
トレードマークとなったバーバーリーのコートを無造作に羽織って現れたが、その彼女自身、ローラはあまりセンスが良くない
と言う。以前、母親のジェーン・バーキンが最近出演した作品で「自分のスタイルではない服装をさせられて辛い思いをした」と
いうエピソードを語っていたと教えると。
「えっ、母がそんなことを言ったの?(笑) ローラの場合、服装や化粧からも彼女のキャラクターを表現したかったから、別に
気にならなかったわ!もちろん、普段はあんな格好はしないけど。それに毎回、作品に出演するたびに、衣装係とは一緒に打
ち合わせをして決めていくのよ」
ルコント監督はこの作品に関するインタビューで「男性より女性のほうがはるかにロマンティストでは?」と語っていたが・・・。
「うーん、そんなに自分をロマンティストとは思わないわ。むしろ男性のほうがずっとロマンティストじゃないのかしら。イヴァン
(・アタル。10年来のパートナーで、俳優かつ監督業にも乗り出した)もどうかしら? もしかしたらお互いがそれぞれのロマン
ティズムを隠し持ってるのかもね」
text/Yuko
Tanaka
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