彼女がもう30歳を過ぎていたとは、時間が流れるのは早いもの。セルジュ・ゲンズブールを父に、ジェーン・バーキンを母にもつ

シャルロットが「なまいきシャルロット」で主演デビューを
飾ったのは13歳のとき。以後、女優としても着々とキャリアを重ねてきた

彼女だが、なぜか
永遠のティーンエイジのような、無垢でデリケートなイメージがある。

最新作は、俳優であり夫であるイヴァン・アタルの初長編監督作、その名も「ぼくの妻はシャル ロット・ゲンズブール」。

セレブな映画女優の妻を持つ男性の複雑な心模様を描いた、キュート
なコメディだ。

「この物語の何割が真実ですかって?私としては、過去の役柄と同様にひとりの登場人物を 演じたに過ぎないの。つまり、イヴァン

が作り上げたシャルロットという役にね。でも、全く真実
ではないとも言えない。過去のどの役にも自分自身を投影していたように、

全く現実とかけ
離れてた自分を演じることは、私には出来ないの」

はにかむように質問に答えるシャルロットは、確かにあの「なまいき〜」の彼女と同じ少女だ。 それにしても! 自分の妻をこんなふうに

描くイヴァンに、なんと彼女は愛されていることか。


「ふふふ。でも、イヴァンも私も映画の中では誇張されたキャラクターとして描かれているのよ。 奔放でポジティブな妻と、ネガティブで

嫉妬深い夫、というふうにね。現実は、そんなに単純では
ないと思う」

風味のあるヴィンテージ風のジーンズに、年季の入った革靴でインタビューに現れた彼女。 その独特のセンスはお母さんのジェーンゆずり。

「母が女優だったから、私も女優になろうと思ったわけじゃない。初主演作の「なまいきシャルロット」 は、私にしてみると仕事というよりアバン

チュールみたいなものだったの。家を遠く離れて
監督やカメラマンと一緒に過ごす時間は、13歳の子供にしてみれば、どきどきする冒険以外の

何者でもないでしょう?さすがに20年もこの仕事をしていれば、プロとしての自覚も芽生えてくるわけ だけど。でも、あれこれ考え込んで

人工的に役を作り上げることはしないタイプね」


少女のようなデリケートな声は、イメージでいうと白い花。ほとんどノーメイクなのに、美しい人 のアリュール(気配)を漂わせている。そんな

彼女も、プライベートでは二児の母親だ。


「上の子が6歳で、下の子はまだ5ヶ月なの。女優という仕事は、撮影で何ヶ月か濃密な時間を 過ごした後、長いバカンスがもらえたりする

から、かえって子育てには向いてる職業なんじゃない
かしら(笑)。仕事場にも連れてきて、できるだけ一緒にいるようにしてるしね」

自分も子供の頃、よく母親の撮影をそばで見ていたのよ、と懐かしそうに語る。究極の自然体女優は ふわりと人々を魅了する不思議な

パワーの持ち主だった。