「なまいきシャルロット」でアイドル旋風を巻き起こしたシャルロット・ゲンズブールも今年で25歳。仏映画界を代表する若手女優として、
着実にキャリアを築く彼女が、世界文学史に残る不滅のヒロイン、ジェイン・エア役に挑戦し、強烈な印象を残す熱演を見せている。自信
作をひっさげて来日したゲンズブールは、ジーンズにセーターという若者らしいスタイルで現れ、今の自分を熱く語った。
シャルロット・ゲンズブールが「なまいきシャルロット」でスクリーンに登場してから、早12年もの歳月が流れた。フランス版ジェネレーション
Xの代表として、常に多くの若者の支持を得てきた彼女。日本にもフレンチ・カジュアルブームを巻き起こし、彼女の人気は色褪せることはない。
そんな彼女が、驚くことに、過去三度もリメイクされた古典の名作「ジェイン・エア」に出演するという。Tシャツとジーンズを脱ぎ捨て、英国の
伝統衣装に身を包んだり、流暢なクィーンズイングリッシュを披露するというのである。ところが、意外といっては何だが、彼女は前代稀に
見るジェイン・エアを披露してくれた。共演者たちを感嘆させた彼女の熱演は、さらなる大きな可能性を感じさせるに充分なものだった。あど
けなかった少女も、今年の7月には25歳の誕生日を迎える。そんな大人の女性へと変貌しつつある彼女に話しを聞いた。
ーあなたが「ジェイン・エア」に出演すると聞いて、始めは驚きました。というのも、今まであなたが出演していた映画とは、全く性質の違うもの
だったからです。なぜ、この映画に出演しようと思ったのですか?
「実は原作を読んだことすらなかったの。「ジェイン・エア」のような脚色ものの場合、原作が大好きで、主人公が大好きだから出演する
ケースが多いみたいだけど、私は映画化の話があることも知らなかった。ただ、プロジェクトが進行していた頃、私はたまたまロサンジェルス
に滞在していて、そこにエージェントがこの脚本を送ってきたの。出演を決めたのはその脚本を読んで、この役柄に恋をしたからよ」
ー「ジェイン・エア」は何度もリメイクされた名作ですよね。過去の作品はご覧になりましたか?
「オーソンウェルズが出演した「ジェイン・エア」は観たけど....。でも、この映画の話が来る前のことで、別に意識して観たわけではないの。
ちょうどロサンジェルスに滞在していた時、テレビでやっていたから」
ーそれだけ偶然が重なると、もはや運命的なものを感じませんか?しかも「ジェイン・エア」の原作者はあなたと同じ名をもつシャーロント・
ブロンテですよ。
「私の母も同じジェーン(バーキン)だし(笑)」
−すごい。それだけ偶然が続くと、もはや必然ですね!ところで、あなたは今まで、ほとんど仏映画に出演してきましたね。しかし今回は
いわばハリウッドの面々との仕事です。やはり違和感がありましたか?
「もちろん!英語を使う映画は二度目なんだけど、他は全て仏映画で、私はすっかりその雰囲気に慣れてしまっていたのよ。仏映画という
のは、映画界全体がいわばファミリーのようなもので、お互いを知っているし、少なくとも知り合いだと思ってる。だから撮影も、ファミリー的
な雰囲気の中で行われるの。ところが今回は、知らない外国人に囲まれて、緊張感に包まれて、私はいわば孤独な立場だった。でも、この
ことは良い結果に結びついたと思う。役作りに、大変役に立ったから。また、撮影現場も実にアメリカ的で、スタッフの数も多かったし、スケー
ルの大きさを感じたわ」
−監督のフランコ・ゼフィッレリはどうでしたか?彼はイタリア人ですよね。感覚的には近かったのではないですか?
「でも、フランスの彼のような監督はいないわ。彼はほとんど演技指導をしない監督で、私は演技指導されることに慣れてしまっていたから、
とても驚いたくらい、でも、自由に任されたことは良かったわ。それだけ私を信頼してくれていたということでもあるわけだし」
−ウィリアム・ハートやアンナ・パキンといった、オスカー受賞者との共演はどうでしたか?
「ウィリアム・ハートとの共演は、とても気持ちのいい仕事だった。彼が演技をしているのを観ることだけでも、私にとっては気持ちのいいもの
だったし。アンナ・パキンは「ピアノレッスン」を観て恋をしてしまっていたから、共演できると聞いてとても嬉しかったの。彼女は本当に素晴らし
いわ」
−あなた自身はどうでしたか?今までとは随分役柄のイメージが違いますよね?
「変化を起こせたことは良かったわ。いつも役柄は、変えていきたいと思っているから」
−演じるうえで、苦労はなかったですか?
「確かに役柄や物語自体が非常に意味があり、強い力を持っているから、それに匹敵する演技ができたかな、とは思う。ただ、今回の人物像
には近代性を持ち込む必要があったの。物語は古い時代の話しだけど、彼女の人物像はむしろ近代的な女性だから」
−ということは、むしろ古典とはいえ、演じやすかったということでしょうか?
「そういった言い方は当てはまらないと思う。演じるうえで簡単とか難しいという言い方を、私はしないから。私にとっては、人物像がありのまま
にあることが重要なの」
−なるほど。ひょっとすると、そういったあなたの姿勢が、共演者やスタッフに絶賛された秘密なのかもしれませんね。
「さぁ、どうでしょう?(笑)」
−ただ、あなたが今まで演じてきた役は、いつもどこか寂しげで、メランコリックな要素が多かったような気がするんです、今回の「ジェイン・
エア」もそうでしたよね?
「確かにどんな役にせよ、今まで人生を生きてきた人物なんだから、メランコリックな部分を持っているかもしれない。でも、充分輝いている
人物ばかりだとも思うわ」
−実際、プライベートのあなたも、演じたきた役柄と近いのですか?
「(苦笑して)そういう質問には、いつも返答に困ってしまうの。......やっぱり、どんな役を演じたときでも必ずどこかに自分の一部が出てくるもの
だと思う。具体的に、どの部分ということは言えないけど、逆にひとつの役を演じると、その人物像の一部が私の体の中に残るのよ」
−ということは、人より様々な経験をしている、つまり、豊富な人生を送っているということになりますね。
「恵まれた環境にいるとは思うわ」
−これで納得しました、あなたの意見や態度を見ていると、想像していた以上に大人っぽく感じていたものですから(笑)
「ありがとう(笑)」
−普段はどんな生活をしているんですか?
「脚本を読んだり、映画を観たり....別に変わったことはしていないわ。家族がいて、犬がいて。とてもシンプルな生活よ」
−映画はどんなジャンルのものを好んで観に行くのですか?
「ジャンルにはこだわらないようにしてるの。だから幅広く観てるつもりだけど」
−それは、自分の仕事にフィードバックするためですか?
「そうね。確かに、気に入ったことは役に立っているし、気に入らなかったことは同じことは絶対にしまいとは思うけど(笑)。そういう意味では
有効的なこともあるかもしれない。でも、基本的に映画を観る時は私も観客の一人。自分の仕事のことはあまり意識しないわ」
−他にプライベートで夢中になっていることはありますか?例えば趣味とか。
「(しばらく考えて)......ない」
−それはやはり忙しいから?
「別に、映画に次々と出演するタイプではないから、プライベートな時間はたくさんあるの。でも、私は時間を自分で管理することがとても
下手で、いつもくだらないことに無駄な時間を使ってしまう、だから、他の人のように、趣味やレジャーを楽しむことが私にはできないのよ」
−将来的にしてみたいことはありますか?
「それって、プライベートなことでしょう?あまりにプライベートすぎるから、話せないわ。でも普通の事よ」
−なんだか気になりますね....(笑)。では、仕事の面ではどうですか?具体的に演じてみたい役柄のイメージは持っていますか?
「イメージは特にないわ。私は一目ぼれできるような脚本を待っているだけなの。もし、演じてみたいアイディアを持っていたら、きっと自分で
脚本を書くと思うし」
−遠い将来は未知数ってことですね、それならば近い将来のことを聞いてもいいですか?
「いいわ(笑)。「ジェイン・エア」の後に一本撮り終わって、春から新しい映画に取り掛かるつもりなの」
−最後に日本のファンにメッセージを頂きたいのですけど。
「日本に私のファンが多いことは知ってるわ。みんな、デビュー当時から忠実に私を追いかけてくれているし。ファンレターもたくさんもらう
から、いつも感激しているの。これからも日本のファンをがっかりさせないように頑張っていくつもりよ」
|