シャルロットがやってくる。ほっそり色白で、ジーンズ、ブーツ、トレンチコートといった定番のアイテムを、彼女にしか

着こなせないような無造作な、シックなやり方で着こなしている。シャルロットはいつだって姿勢がよく、長い首がすっと

伸びている。紅茶のカップの上にそっと置かれたほっそりした繊細な指。少しやせたようだ。実は彼女は昨年の9月、

脳内出血のために大手術をしたばかり。その数ヶ月前に、アメリカで水上スキーをしているときに頭を打ち、その後

ときどき原因不明の頭痛が起きていた。

「最初はただの頭痛だと思って、ヴェネチア映画祭にも参加したの。でも、どうにも体調が悪くて。姉のケイトに電話

したら、それはすぐに検査をしたほうがいいと言われた。実は、下手をすれば生命にかかわるような事態だったらしくて

私も家族もびっくり。病院から家に戻ったときは、生きていられることに感謝したわ。これが手術後、初めてのインタビュ

ーなのよ」

手術も無事に終わり、こうして取材を受けられるまでに回復したシャルロット。いつもよりリラックスして見えるのは

気のせいだろうか。

「きっと年齢のせいもあるわね。昔ほどいろんなことに神経をとがらせなくなった。ものごとを自然に受け入れられる

ようになったというか」

シャルロットは昨年、「ヴァニティ・フェア」誌が高齢で実施しているスタイルアワードで”世界で最もエレガントな女性”

に選ばれた。だが正しくは”世界で最もエレガントな女性のひとり”にすぎないよ、とはにかむ。

「でも、光栄だし、すごくうれしかった。私はけっこう、いろんなメディアでの自分の評判をチェックするのが

すきなの。それがいいものでも、悪いものでもね。アルバムが出たときも、インターネットの書き込みで酷評

されているのを読んで、マゾヒスティックな快感にひたったりした(笑)」

アルバムは世界的に大ヒットし、批評家からも大絶賛されたから、これはkの女が言うとおり、マゾヒスティック

な好意というべきだろう。

シャルロットは最近、ジェラルド・ダレルの顔にもなっていて、2008年春夏の広告では、エルでもおなじみの

女性フォトグラファー、シルヴィ・ランクルノンがフレンチ・リヴィエラで撮影した、若き母親をイメージした写真

が話題になっている。

「ダレルの広告に出て本当によかったと思っているの。最初に契約の話がきたとき、私はまだどのファッション

ブランドとも契約したことがなくて、きっと今のトレンドと違うルックスなのね、と自分を褒めていたところだった

(笑)。ダレルの前のモデルはスーパーモデルのステファニー・セイモアだったので、その後を継ぐだなんて

光栄だったし。ファッション写真のモデルになるのは楽しいわ。だから、いろんな仕事で忙しいけど、続けよう

と思っている」

映画やファッション撮影のほかに、彼女がパーソナルな事業として取り組んでいるのは、父セルジュ・ゲンズ

ブール、母ジェーン・バーキンと共に暮らした、サンジェルマン・デ・プレ、ヴェルヌイユ通りのアパルトマンを

ゲンズブール記念館としてオープンする計画だ。

「もうこの企画がもちあがってから15年になるの。でもこのところ、建築家のジャン・ヌーヴェルにも参加して

もらって、かなり具体化している。あとは財政的に支援してくれるメセナさえ見つかれば・・・。あのアパルト

マンには個人的な思い出がいっぱい詰まっているけれど、一般に公開すれば、父もきっと喜んでくれる

と思う」

現在36歳。夫のイヴァン・アタルと15年も続く固い信頼関係を気づき、妻として、二人の子供の母親として

幸福な毎日を送る。キャリアについて後悔することはないが、先日、25歳の自分の写真を見て、はっとする

瞬間があったという。

「当時の私は、演技にも容姿にも自信がなくて、いつも不安を感じていたの。でも36歳のいま見ると、

”あら、悪くないじゃない?”と昔の自分に言ってあげたい気分になる。もっと自信を持ちなさいって。

女優には20代にしかできない役がある。尻込みせずに挑戦すべきだったわ。

トッド・ヘインズの「アイム・ノット・ゼア」に出演して、アメリカでの映画制作も面白いと思うようになった。

今度は映画にも全力投球したいわ」