シャルロット・ゲンズブールはセルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンの娘として生まれた瞬間から

セレブの仲間入り。13歳で父とデュエットした「レモンインセスト」や、15歳で出演した父の監督作「シャル

ロット・フォーエバー」では、近親相姦の薫りがセンセーショナルな話題を振りまいた。そんな注目から

逃れたいといったような伏し目がちでナイーヴな少女は、自分と同じ名の思春期のヒロインを演じた

「なまいきシャルロット」で世界中のアイドルとなった。早いもので、それから16年。彼女は再びスクリーン

で、シャルロット役を演じた。

私生活のパートナーである俳優イヴァン・アタルの監督デビュー作「僕の妻はシャルロットゲンズブール」

のなかで。彼女が演じるのは、シャルロットという名の人気女優。監督を兼ねるイヴァン・アタルは、妻が

女優であることに振り回される、スポーツ記者の夫に扮する。どこに行ってもファンに追いかけられる生活

にうんざり気味のイヴァンは、シャルロットのロンドン撮影のため、しばし別居生活を余技なくされる。しか

も相手役がプレイボーイの誉高い英国俳優(テレンス・スタンプ)と聞いて嫉妬の虫が騒ぎ出す。

そうしてザ・クラッシュの「ロンドン・コーリング」をバックに、イヴァンはユーロスターに乗ってパリ―ロン

ドン間を行ったりきたりすることになるのだ。当初は自分の演技がイヴァンを落胆させやしないかという

不安に苛まれたという彼女だが、その緊張をやがて信頼へと変え、コミカルな演技にも挑戦して新鮮な

魅力を振りまいている。ナチュラルで、セクシーなシャルロットの魅力を、このところ独り占めにしてきた

夫イヴァンがスクリーンに開放させた感がある。

「実生活ではイヴァンよりも私のほうが嫉妬深いわね。そういえば、今回不思議な経験をしたの。現場

でイヴァンとリュディヴィーヌ・サニエのキスシーンを見ているうちに、無性にいらいらしていや〜な気分

になってしまった(笑)。ふだんはそういうシーンがあっても、おたがいの現場に
行って見ることがないか

ら気にならなかった。一方で私がテレンス・スタンプとキスしているのを
イヴァンが見ているわけでしょ。

とても妙な感じがして、やっぱりこの仕事ってビザールなんだ!
とはじめて実感したの(笑)」

映画のなかのシャルロットは嫉妬に狂った夫と仕事の板ばさみに悩むものの、妊娠というハッピー

幕切れを迎える。

「子供はずっと昔から欲しいと思っていたから、実生活で妊娠がわかったときは映画同様のリアクショ

ンで大はしゃぎだった。それまで何より自分が優先だったのに、子供の誕生によって
自分のことが二の

次になり、仕事に関しては、よりプロフェッショナルに「職業」という認識を強く
した。ただ、何かを犠牲に

して子育てすることは必要ないと思うの。そんなことしたら、いずれ母親
は子供を恨むようになるし、い

ずれ子供たちは子供たちの道を行くわけだから」

アーティストとして、ファンション・イコンとして、多忙を極めた母親ジェーン・バーキン。そんな親を見て

育ち、今は女優を天職と感じているというシャルロットは、「今回の来日のお土産に息子ベンに
は黒い

日本のランドセルを買ったの」と、はにかんだ笑顔でささやいた。