いわゆるフランス女優のイメージといったら、どんなスターが思い浮かぶだろう。往年のジャンヌ
モローや
カトリーヌドヌーヴのような銀幕のスタータイプか、よりコケティッシュ派のイジャベルアジャーニやエマニュ
エルベアール、あるいは今やロープデコルテを着てオスカーの舞台に登場するジュリエットビノシュとか?
いずれにせよ、親近感がもてるというよりは、いかにもスクリーンの向こう側にいる映画スター。ファッション
もきっと専属スタイリストがついているのだろうと思えるような、並の人間にはちょっとためらわれるゴージャ
スなものばかり。
だが、そんなきらびやかな女優スタイルも、最近少しずつ変化を見せている。特に若手女優のあいだには、
豪華なデザイナーズブランドに身を固めるのはなく、あくまで自分のスタイルにこだわること、それも肩ひじ
張らず自然体であることが、そのまま人間的な魅力となって、スクリーンに反映しているような役者が増え
ているのだ。
だから、映画を見ていても、ついついそのファッションをヒントにしたくなる。彼女たちを見ていると、チープ
シックとは単に「安いけれどエレガントに見える」ということではなく、いかに中身も含めて個性的でいられ
るか、ということなのかがわかるだろう。その代表格といえるのはやはりこの人、シャルロット・ゲンズブー
ル。ジーンズ、スニーカーの定番スタイルは有名だが、彼女の場合それが「チープシック」とか「アンチ
おしゃれ」という意識ですらないところがおもしろい。
「きれいなドレスやスカートは見て楽しむぶんにはいいけど、いざ自分が着るとなるとどうしても気やすく
てラクなものになってしまう」
こだわりというにはあまりに素朴な発言。だがそれは、服が自分にとって果たす役割を知っていればこ
そだろう。逆にいえば、決しておしゃれが自分よりも目立つことがない。最も高度なテクニシャンともいえる。
そんな彼女だから、子供を産み一児の母となった今もそのスタイルは変わらない。よれよれのTシャツに
擦り切れたジーンズは、シャルロット・ゲンズブールという人格を表す大事なキーワード、というよりその
一部分にすらなっているのだ。
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